八ヶ岳(2010.7.17〜2010.7.18)②

1日目八ヶ岳(2010.7.17〜2010.7.18)① - 山頂はまだまだ遠い

標高2,772mとは思えない快適空間での一夜を終えて,山中一泊グループ登山の旅2日目の始まりです。
個室という開放感と前日の疲れから,一回も起きること無く朝の4時に起きました。
この赤岳展望荘は東西の開けた稜線に建っている小屋なので,部屋からサンダルはいてちょっと歩けば日の出が拝める素晴らしい立地なのです。
東の空には見事な雲海が広がっていて,たくさんの人が思い思いにこの静かな時間を過ごしていました。


[朝焼けに染まる赤岳]

[出たよ!!]

日の出の後は朝食タイムですが,昨日の小屋到着が少々遅れたため,ちょっと順番を待ちます。
もう一眠りしたりとみんなが思い思いに過ごすなか,私は,昨日とは打って変わっての晴天に興奮冷めやらず,次々に出発する人々を見送りながら外でのんびりと過ごしました。
八ヶ岳の位置的に東に見える山から知ってる山を探したり,未だ踏み入れたことのない日本アルプスに思いを馳せます。
あの,とんがってるのが槍かしら?とすとその左のへっこんでるのが大キレット?的なね。
いつかは行ってみたいけど,ちょっと怖いよね。


[西の彼方の北アルプス

[雲も引けて最高の天気!]

そして足元には昨日いた行者小屋と,今日のお昼ポイント赤岳鉱泉小屋を発見!
こうやって見ると近いんだけどな〜
朝食を終えて,準備万端でいよいよ今日の山行に出発です。

言うても今日の行程の大半は稜線歩き。
重い荷物にヒイコラ言って登ってきた昨日の高低差はもう無いのです。
勝ったも同然!!!
昨日死ぬ思いで登った赤岳を背に,足取りも軽く,いざ行かん!!

本日のルートは下記の通り。
[赤岳展望荘⇒地蔵の頭(2722m)⇒横岳(2899m)⇒硫黄岳(2760m)⇒赤岳鉱泉⇒美濃戸口]
所要予定時間7時間半ですってよ!!(昼食等休憩込)


[手前が昨日の行者小屋,右奥が赤岳鉱泉

[お世話になった赤岳展望荘と赤岳と富士山!]

[昨日は雲に隠れていた阿弥陀岳

横岳から硫黄岳手前まで岩場が連続するこのルートでは,休む暇もなく鎖を掴み,梯子を登り降りるルートが続きます。遠目から見ると高度感満載のルートですが,いざ自分がその場に立って見れば,足場も比較的広く,鎖等の補助もしっかりと整備されているので,恐怖感はほとんどありませんでした。
ただ,ルートを通過できるのが人一人というところもざらにあって,流石の八ヶ岳ではツアーの登山グループとすれ違うことも頻繁にあるので,少々待たなければいけないことも度々でした。
もうコレばっかりはお互い様なので,待っている間は周囲の景色を眺めつつぼんやりとして過ごしました。


[連続する岩場,鎖,梯子!]

[美しすぎる赤岳。遠くから見ても素敵]


[遠目から見ると恐ろしい1枚岩]

[意外と登りやすかった]


[岩を落っことさないように慎重に]

[この稜線を歩いてきたとは]

[登るより降りるほうが怖いよね]

岩場にも大分慣れて,横岳頂上は軽い休憩で流して,硫黄岳へと向かいます。
これまでその先の景色を遮っていた横岳を越えて,ついにその姿を表した硫黄岳。
あれ?何かなだらかな丘的に見えますけど。
いや〜かの有名な八ヶ岳もこんな感じで終わっちゃうのね〜〜〜
と,意気揚々と向かいます。


[硫黄岳が見えた!]

[この辺りの高度感は中々]

[遠目からはなだらかな硫黄岳ちゃん]

横岳を超えるとがらっと様相が変わって,ちらほらとお花畑が広がっていて,高山植物の女王「コマクサ」の群生地が保護されていたりと,周辺の環境が大切にされていることがわかります。もうね,写真も必死に取りますとも。近づけないから大変だったよ!

横岳ピークからの下りを終えて,硫黄岳山荘に到着です。
天気も良くたくさんの人でにぎわっていました。

ここでの小休憩を終えれば,いよいよ本日の最終登坂!
硫黄岳に挑戦です。
と言っても,あのなだらかな斜面ですよ。
これまであの切り立った岩場を越えてきた私にとっては,目をつぶっても行けるはず!!
と余裕綽々で進みます。


[ケルンを目印に歩く]

北八ヶ岳が一望!]

が,が,ですよ・・・
このなだらかで穏やかなルートが何時まで経っても終わらない。
背中に背負ったいささか大きすぎたリュックが肩に重りとなって載しかかります。
リメンバーイエスタデイ!!!!

なんとか必死の形相で最後の登りを登り抜けました。

こちらの硫黄岳。これまで歩いてきたルートからはなだらかな斜面で出来た山に見えますが,反対側からは打って変わって断崖絶壁となっている独特の山容となっています。
これ,爆裂火口と言いまして,火山活動の結果として山体の一部が吹き飛んだ結果なのだそうです。
広い山頂に荷物をデポして,しばし想像を超える自然の力をのぞき見ていました。
恐るべし自然。

時間帯もいい塩梅になってきて(言うても9:30とかなんだけど),雲も上がってきたところで,いよいよ八ヶ岳から下山します。


[噂の爆裂火口]

[雲が上がってきちゃった]

硫黄岳の麓に,昨日の行者小屋と対のように建っている赤岳鉱泉まで一気に降りて,しばしお昼休憩です。
もうここからは登りもないので,心いくまで食べて食べて食べつくしました。
いや〜何かこの時にために登ってる気がするぐらい,登山のお昼は楽しいね。

赤岳鉱泉小屋から先は昨日の登り道と似た沢沿いのアップダウンが少ない道を進みます。
やっぱり少々長いこの道ですが,ここでスペシャルゲストが登場しました。
沢の中のヤブに生えた緑を食べてるカモシカちゃんです!!!
よっ!天然記念物!!!

これまで動物園では何度か会ったことのある彼ですが,野生児であるところの彼とのギャップに驚きました。
なんかね,とにかく毛が見るからに脂っぽいんですよ。う〜ん,1週間はお風呂入ってないよね?的な。
見ているだけで獣臭がするような佇まいでした。
恐るべし自然,part2。


[北沢に架かる橋を渡って渡ってまた渡る]

[獣感満載だった日本カモシカ

そんなこんなで,自分の実力を思い知った今回の八ヶ岳
でもこの登山旅のおかげで,他のメジャー山にビビることなく登れるきっかけになってくれた登山となりました。

現在絶賛子育て中であるところの我が家では,もうしばらく山から離れていますが,またいつか登りたいな〜〜〜
まぁ,山は逃げないからね!!


[これで終わりだと思うと寂しい帰り道]


■おまけ

[登山中に撮った高山植物

八ヶ岳(2010.7.17〜2010.7.18)①

今となっては遠い昔の話しのようですが,八ヶ岳に登った時の話しをば。


夢のようだった富士山登山の後,すっかり登山に魅了されてしまった私達夫婦。
冬季はさすがに足が伸びないものの,富士山後も三頭山,平標山,赤城山と自分たちの手の届く範囲の山を探しては,遊んで参りました。
多少なりとも体力と自信が着いてきたころ,一年ぶりのご連絡を頂きました。
そうです。リーダーとの登山旅行です。

1年ぶりの山中一泊登山。
今回選ばれたのは『八ヶ岳

[この威風堂々たる赤岳の姿!!]

いや〜あの〜確かに自信が付いたとは言いましたが,ちょっと・・・その〜あの『八ヶ岳』ですよね??
初心者マークの私でも聞いたことある有名なお山大先生ですよ。

なんでも今回の計画書によれば,初日は10時出発の15時小屋到着で移動時間5時間。
そして2日目は6時半出発の14時下山で移動時間7時間半。
足したら2日間で半日以上歩くことになってるよ!!
1年前の富士山で膝がヘロヘロになった記憶が蘇ります。

ただ,1年前とはこちらも違うはず!!
色んな人の体験を見ては心を踊らせて当日を待ちました。

今回のルートは八ヶ岳の主峰赤岳(2,889m)を起点として,南八ヶ岳を反時計回りに回るコース。

【1日目】
美濃戸口⇒行者小屋⇒赤岳⇒赤岳天望山荘(泊)
【2日目】
赤岳天望山荘⇒横岳⇒硫黄岳山荘⇒硫黄岳⇒赤岳鉱泉⇒美濃戸口


今回も1年前に似たチーム構成(友人夫婦+友人+リーダー+自分夫婦=計6名)で3台に分けれて,八ヶ岳Pに集合しました。
が,,,,アゲイン1年前!!!またもや1台が中央道渋滞に巻き込まれ遅刻しまして・・・・・

なんてこともありましたが,メンバー全員が無事に登山口に集合しました。
さぁ,いざ出発!

八ヶ岳登山口(美濃戸口)から最初の目的地「行者小屋」までは比較的なだらかな斜面をまったりと歩いていきます。若干天気が悪いのが気になりますが,雑木林に流れる小川(南沢)にそって歩くこの道のりは気持ちが良いです。
ただ,ちょっと長かったけど・・・・(所要時間2時間)

[キレイな小川(南沢)沿いを歩きます]

[途中倒木に覆われた箇所も・・・大雨の日が恐ろしい]

ウォーミングアップも兼ねた2時間。
軽い足取りで行者小屋に到着し,準備してきたお昼ご飯を美味しく頂きました。
1年ぶりのチーム登山に盛上がりながら,1年間で取り揃えた登山グッズのお披露目会が始まりました。

小屋にはおでんなんかも取り揃えてあり,皆さん思い思いに休憩の一時を過ごしています。
相変わらず雲は晴れないだけど,たまに見える切れ間から赤岳が威圧してくる気もしないでもないですが,気にしないことにしていました。
あ〜ここまでは本当に楽しかった。


昼食休憩を終えて,いよいよ赤岳に取り付きます。
が,,,が,,,調子に乗ってお昼を食べ過ぎたか,新調した60Lリュックに荷物を積み過ぎたか,全く足が前に出ません。
登っている文三郎尾根は鋼製階段が斜面に張り付いて出来たルートで,これがひたすらに続きます。
あ〜しんどい。やばい,もうイヤだ。でも置いていかれたくないし,キツイなんて絶対言いたくない。
ひたすらに列の最後をみんなについて登りました。

[ひたすらに続く階段]

[さっきまでいた行者小屋。あそこにいた時は楽しかったなぁ]

階段を終えて,ちょっとだけガレた斜面を登り続けやっと中岳との分岐地点で休憩を頂けました。
いや〜マジで死ぬかと思った。富士山の3倍くらいきつかったよ!休憩の過ごし方の大事さが骨身に染みました。
雲は相変わらず晴れませんが,高さが今いる場所と大体同じくらい。
だいぶ登ってきたことを実感します。

[雲どっか行かないかな〜]

[中岳と阿弥陀岳は雲の中]

休憩を終えていよいよ赤岳のハイライトであるところの岩場にアタックです。
岩場といっても鎖でしっかりと整備されたルートで足場がぐらつくこともほとんど無く,広めに確保されたルートの中から自分が登りやすいルートを選んで登っていきます。
本格的な岩場はこれが初めてでしたが,楽しかったなぁ。

[楽しい岩場]

ついに赤岳の山頂に到着しましたが,ついには雲が晴れることもなく,しばし写真を取ったりして,狭い頂上を後にします。

[雲に包まれた赤岳頂上山荘]

赤岳山頂より少々下れば本日お世話になる「赤岳展望荘」に到着です。

[展望荘が見えてきた]

こちらの山荘はその名にふさわしく赤岳山頂を一望に出来る山荘で,
 ★個室有り!!!
 ★天ぷら付きの晩御飯!!!
 ★五右衛門風呂もあるよ!!!!
と,標高2,772mにありながら,「ここは天国ですか?」といった素晴らしい小屋でした。あまりにも良く眠れて,楽しみだった星空が見れ無かったのが悔やまれます。

この天国山荘で夕日に染まる赤岳を見ながらゆっくりと過ごしました。
明日はここから横岳⇒硫黄岳と向かいます!

2日目に続く!

「八日目の蝉」を見たよ

[あらすじ from 映画.com]
1985年、自らが母親になれない絶望から、希和子(永作)は不倫相手の子を誘拐してわが子として育てる。4歳になり初めて実の両親の元に戻った恵理菜(井上)は、育ての母が誘拐犯であったと知り、心を閉ざしたまま成長する。やがて21歳になった恵理菜は妊娠するが、その相手もまた家庭を持つ男だった……。

なんとなく話題になってた気がしたので,
wowow放送分を録画していたものをやっとこさ見ました。
監督 成島出,主演 井上真央です。
見たあとで知ったんだけど,日本アカデミー賞10冠で主要部門とりまくりだったりと,その筋からは随分評価が高い作品みたいです。
いや,実際出演している女優さんは,全員が存在感あって印象的でした。



にしても,この映画はズルいね。

実際,自分に娘がいることを考えると,希和子(永作博美)は何があっても許せる人物では無いです。
もうね,母親の気持ちが痛いほどわかる。
だって,一番可愛くて一番親の助けが必要な時期を奪われるんだから。
そりゃ殺してやりたいと思うでしょ。
しかもその行為自体を悪びれる様子が無いんだもんなぁ。
やっとこさ帰ってきた娘との距離感はもう埋める事が出来ないものになってるし,本作で描かれた実のお母さん(森口瑤子)はかなり可哀想でした。

だのにですよ,私はこの映画の希和子と恵理菜(井上真央)を見て号泣ですよ。
いや〜久しぶりに激しく泣いたね。
二人の仮初の親子関係は4歳までしか続かないとわかっているので,小豆島の美しい背景をもとに二人が過ごす時間を見るだけで胸が痛くなるんです。
0歳から4歳という時期を一緒に過ごすことになった恵理菜にとっては,希和子は紛れもなく母親なんです。
だからこそ二人の生活と別れを見るのが辛い。辛すぎる。

そもそも希和子の誤った行為が原因での当然の結果なので,きっと普通に暮らしてニュースを見ていれば,元の両親の元に戻れてよかったね,大変だったねと思うはずなんです。そして犯人(希和子)は何て酷いんだと。

なので,この映画を見て泣いている自分がね,本当は同情して泣くような話じゃないとも思うだけに葛藤が渦巻いいて渦巻いて。


それだけに,複雑な人生を過ごすことになってしまった恵理菜が,最後に見せる表情が本当に嬉しかったです。
千草(小池栄子)が最後に恵理菜に話す事が本当にそうなれば良いと心から願いました。

にしてもこの映画に出る男共ときたら・・・
あ,写真館のおっさん(田中泯)は別だけど。
なんだろうね,田中泯の存在感。
あそこにあれだけの存在感必要なのかしらとは思いましたよ。
かっこよかったけど,かっこ良すぎてね。
なんかエスパー並の事やってるし。

いやいや母親になることって何なんだろうってことを考えさせられる,
いい映画だったと思います。

「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」を読んだよ

新作が出る度に,良くも悪くも話題になってしまう村上春樹
もう一種の呪いのごとき毎度のパターンで,賛辞と罵詈雑言が飛び交う話題の新作を読みました。
なんでしょうね,この毎度の騒ぎは。
よく比較対象にされる村上龍では,賛辞はあっても,ここまでの悪意をもった意見は聞こえてこないんだけど。
別に文体が合わないなら合わないで良いと思うんだけど,なんでおしゃれ気取りで読んでるだけとか言われなきゃいけないのさ。
ほっとけよって思うね。ほんとに。

私自身は社会人になってから(もう9年前!),初めてこの人の本を読みました。
それ以来,世に出ている作品を読みあさり,ついには新作を待ちわびるようになった感じです。
奥様ともよく村上春樹の本の話しをするのですが,この人を「村上おじさんorおじさん」と呼んでいるので,ここでもそうさせてもらいます。
("村上春樹"って書くとなんか真面目に書かないといけないんだっていう脅迫観念があるのよね)


ではでは,本作。
まず,読後の感想としては,『好き!!』です。
数多の作品中でも,ここまでメッセージがしっかりと出ている作品も珍しいと思います。
特にエリ(クロ)とのフィンランドでの会話には,震災を経験した日本の人々に宛てられた手紙のようにも思えました。
「私たちはこうして生き残ったんだよ。私も君も。そして生き残った人間には、生き残った人間が果たさなくちゃならない責務がある。それはね、できるだけこのまましっかりここに生き残り続けることだよ。たとえいろんなことが不完全にしかできないとしても」
そして,最後の文章もまた同じように感じました。
最後のは,震災というよりは今の時代に生きるということに対してな気もするけど。


村上おじさんの作品といえば,『ある物事を表現する』という共通する大きなテーマがあって,それを,それぞれの作品ごとに表現や環境を変えて書いていくというのが,特徴だと思います。
(要はやってることが大体同じ)

自分なりに考えれば,それは単純に『死』であったり,人間が本質的に持つ『集団性と暴力性』という理解になるんだけど,作品中では,それが,
 直子が囚われた世界(ノルウェイの森)
 背中に星形の斑紋のある羊(羊をめぐる冒険)
 世界の終わりとやみくろの住む世界(世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド)
 井戸と繋がる世界(ねじまき鳥クロニクル)
 ナカタさんの見る夢と森の奥(海辺のカフカ)
などなど色々な形をもって表されていますが,最もわかりやすい表現は『壁と卵(エルサレム賞授賞式スピーチ)』に現れてると思います。

■以下参照
村上春樹エルサレム受賞スピーチ | 書き起こし.com

というか改めて読んでみると,それが小説を書く理由だって言ってましたね。
にしても,おじさん,良いスピーチだと思います。

そして,物語中の主人公であるところの『僕』は,大体においてそれらと上手くやっていくことが出来ない人間であって,だからこそ,それに抗い,場合によっては闘うことになります。
その闘いには,勝つこともあれば,決着がつかないこともありますが,主人公はそれらにギリギリの所まで近づくために,長い道のりを必要とします。

前述のように,この,主人公が闘うことになる物事は大体において抽象的に描かれているんですが,今回の主人公であるところの多崎君はそんな摩訶不思議ワールドに飛び込むことをしません。
しいて言えば灰田君(ミスターグレイ)と過ごした時間がありますが。
だからといって、本作がそのテーマを全く扱わないかというとそうではないと思います。
むしろ,より具体的な事例として,アオ・アカの住む世界があり,そこから離れたクロと,囚われてしまったシロがいます。
そして,多崎君は一度は失った彼らと再び向き合うことで,その世界の中で生きていく自分を見つけていく。
そんなお話だったと思います。



長編とは言え比較的短い作品となった本作。
他の長編よりもぐっと身近な物語でした。
しいて言えば短篇集「神の子どもたちはみな踊る」あたりに近い雰囲気を感じました。

いやいや,とにかく良いお話でした。

「ニュースルーム」が面白い。

[あらすじ from WOWOW-番組HPWOWOW ONLINE
全米TV界で日々生き馬の目を抜く競争に追われる、報道専門チャンネル“ACN(アトランティス・ケーブル・ニュース)”。その人気キャスター、ウィルはある大学のパネルディスカッションで非国民発言をしてしまったことが問題視される。そんな彼のニュース番組を新任のエグゼクティブプロデューサー、マッケンジーが引き継ぐが、彼女はウィルの元恋人だった。そんな彼らやスタッフのもとに世界中から届く最新ニュースは、メキシコ湾原油流出事故、日本の東日本大震災原発の事故など。ニュースの裏にある真実をどう捉え、どう伝えるか。時に激しい議論も辞することなく、彼らは生放送を通じ、本物のニュース番組を生み出していく。

4月から始まったこのドラマ。
有料放送であるところのWOWOWでの放映なので,オススメするのも如何とも思いますが,とにかく面白いのです。
映画「ソーシャル・ネットワーク」脚本のアーロン・ソーキン企画・総指揮によるこのドラマ。
それこそソーシャル・ネットワークを彷彿とさせるテンポで一話一話が進んでいくため,ちょっと他のことを考えていると,あっという間に話の筋から置いていかれます。
しかも,話しの展開上些細な事として扱われていたことが,後々伏線として効いてきちゃったりするもんで,見てる間は頭フル回転です。
毎週1話見終わる毎に痺れてぼーっとしています。
月曜夜11時放送で,終わるのは12時。
寝なきゃいけない時間に頭が覚醒してしまうので,本当にいい迷惑です。


昨日(5/13)までに全10話中6話までが終わってしまいました。
中でも昨日の第6話「暴走する正義Bullies」は最高でした。

本作では,各話ごとに実際に起こった事件・事故等のニュースを織り交ぜながら話が展開していくのが特徴で,それが作中のリアリティや緊迫感を高めるスパイスとなっています。
あくまでもスパイス扱いなので,「そのニュースもっと教えてくれよ!」となることもしばしばですが・・・
まぁそれは自分で勉強しましょう。

当該第6話では,「福島第一原子力発電所事故」が取り扱われまして,東電広報なる方も出て来ました。
(ドラマの背景となるニュースルームに設置されたモニターにも,東電の記者会見が流れるこだわりっぷり!ぼんやりとだけど!!)
あちらの国相変わらずの日本感といいますか,『東京電力』がデカデカと明朝フォントで書かれた背景等には少々げんなりしてしまう所もありますが,「私達(アメリカ)は何でも大げさにして騒いでしまうけど,彼ら(日本)は,見たくない辛い現実は過小評価してしまうの(セリフ適当)」なんてフムフムと頷くところもありました。

第6話での話しの中心になるのは,若手女性キャスターのスローン。
経済に関する博士号を2つもつやり手の彼女(しかも美人)が番組内で暴走し,オフレコとして事前に聞いていた話を番組中で勝手に漏らしてしまいます。
彼女は彼女なりに信じる正義があり,その心情をもとに,その行為に至ったわけですが,許される行為ではなく,処分を受けてしまいます。
やっと訪れたチャンスをものにしたいという焦りもあったと思います。

一方で,主人公であるところのウィルは最近の不眠症の相談で病院へ。そこでカウンセリングを受ける彼は,スローンの失敗の一因が自分であることを明かします。
そして,カウンセリングを受けていく中で,キャスターとしてベテランであるところの彼も,番組中,気づかぬうちにスローンと同じ過ちを犯してしまっていることに思い至ります。

第6話はこうして,ニュース番組が本来多面性を持つはずである人々をある一面だけで切り取ってしまうことの危うさを描きながら,物語の登場人物である彼らにも多様な側面があることを描いていきます。
そして最後に,彼らはジャーナリストとして,自分達が最も嫌う方法で,失敗の枷を背負う事を決めます。


本当にざっくりとした内容だけど,大筋の流れはこんな感じ。
もちろん,話しにはまだまだ枝葉があって,しかも,その枝葉が複雑にからみ合って,次の話しでその枝が幹になってたりするので,本当に油断がならないドラマです。
なおかつ,奴とあの娘やあの人とこの人の恋愛模様が絡んだりするわけですよ。
あ〜もう1回見ないと。アソコとソコが良くわからなかったんだよね。

次回第7話ではいよいよあの事件が起こります。
物語も残り4話でクライマックスへまっしぐら。
あ〜月曜日が待ち遠しい!!!

「雨・赤毛」-モーム短篇集を読んだよ

[あらすじ from 新潮社HP]
狂信的な布教への情熱に燃える宣教師が、任地へ向う途中、検疫のために南洋の小島に上陸する。彼はここで同じ船の船客であるいかがわしい女の教化に乗りだすが、重く間断なく降り続く雨が彼の理性をかき乱してしまう……。世界短篇小説史上の傑作といわれる「雨」のほか、浪漫的なムードとシニックな結末で読者を魅了する恋愛小説「赤毛」など、南海を舞台にした短篇3編を収録。

私のオールタイム・ベストの一冊として『人間の絆』がありまして,その作家がこちらのサマセット・モーム氏になります。
映画「セブン」でもちらっと名前が出てきたりする作家です。

本作中の収録作3作品ともに南国を舞台としたお話ですが,観光地的な天国感はなく,あのまとわりつくようなジメジメ感を感じさせるお話でした。

『雨』
いやはや,めっちゃ面白い。
ちょっと長めの短編小説だけど,世界短編小説史上の傑作というのも納得です。
結末に対して誰が何をやったのか具体的なことは一切描かれないんだけど,それだけに妄想が膨らみます。
 「豚」が何を表してるのか。
 宣教師が強化のために訪ねた女の部屋から帰った後,なおも続ける熱心な祈りは何を祈っていたのか。
そんなことをふらふらと妄想してしまいます。

[以下自分妄想のネタバレ(反転)]
宣教師が首元が切られた死体で発見され,教化を受けたと思われた娼婦が元の姿に戻るところでこのお話は終わり。最後に娼婦が「男なんてみんな同じ。豚,豚なのよ」的なセリフを主人公である医師に言って終わることからも,宣教師が娼婦に丸め込まれてしまったことが伺えます。日々の熱心な教化活動の中で少しづつ娼婦に籠絡されていった宣教師はその迷いを断ち切るため,娼婦の部屋を出た後に過度なまでの祈りを捧げていたのかなと。また,娼婦の手に落ちた宣教師は,狂信的に信じた教えに背いたことへの罪悪感(絶望?)から自ら命を断ったのだとも。いや〜怖いね。
[以上ネタバレ妄想終わり]

雨を隠喩的に使うことは映画でも小説でもよくあることだけど,これもとても象徴的に扱っていると思います。
モーム,やっぱ面白い。


赤毛
こちらはうって変わって恋の物語。
と言っても・・・・・なんですが。

物語の最後,主人公であるところの彼がとった行動(or取らなかった行動とも言えるんだけど)に思いを寄せると愛する人と生涯をともにすることについて考えてしまいました。


『ホノルル』
これもまたもや恋がからむお話。
いづれにしても幸せな結末とはいかないところに,モームの抱いていた人生観を感じさせます。

3作いづれも好きなんだけど,やはり,表題作『雨』は抜群でした。

「ものすごくうるさくて,ありえないほど近い」を見たよ

[あらすじ from goo映画]
9.11同時多発テロで最愛の父トーマスを亡くした少年オスカー。その死に納得できないまま一年が経ったある日、父のクローゼットで見覚えのない一本の鍵を見つけると、その鍵で開けるべき鍵穴を探す計画を立てる。かつて父と楽しんだ“調査探索ゲーム”のように。悲しみで抜け殻のようになった母に失望したオスカーは、父が遺したはずのメッセージを求めて、祖母のアパートに間借りする老人を道連れに旅に出る。

以前WOWOWでやってたものを撮りっぱなしだった
トム・ハンクスサンドラ・ブロック等出演,スティーブン・ダルドリー監督の
『ものすごくうるさくて,ありえないほど近い』を見ました。
 [どこで?]家で 
 [誰と?] ひとりで

原作小説がとっても良かったので,評判を聞きつつ恐る恐る見てみたといったところです。
まぁね,子持ちとなるともうね正直ぐいっと来てしまうところがございますよ。
条件反射的に泣いてしまうものなのです。
まぁそれはさておき。


原作を読んでだいぶ時間がたっているので記憶がおぼろげだけど,映画と小説では何点か異なるところがありました。
そもそもエンターテイメントであることとしては同類であっても,映画と小説では表現の枠というか楽しみ方というか,その範囲が全く異なるので違ってくるのは当然なんだけれども。
小説には当然ながら絵が無いので(例外もあるけど*1),そこに描写されているもの以外は自分で汲み取る事が必要。それは暗喩だったり自分の空想だったり,いわゆる行間を読むってことになるのかもしれないけど,それが小説の楽しみでもあって。
良い小説に出会うと,本を読みながら,自分の中に出来上がった世界で登場人物達が踊りだす。そんな経験ができるのが小説だと思う。
それに対して映画は絵と言葉での表現になるから,主体的に動いている物事の背景も表現することになる。当然そうじゃない表現方法を取る映画があるのはここではさて置き。
だから原作があっての映画を見る(原作を読んでしまってから映画を見る)時には,この映画は監督の原作に対する読書感想映画なんだと思ってからいつも見ています。
じゃないとあそこが違うとかここが違うとか気になって気になって。


それでもやっぱり言いたくなるのが人心。
大きく違うところとしては
1.オスカー君の心の傷がよりクローズアップされている(小説だともっとポップさもあった気がする。)
2.間借り人とおばあちゃんの話の省略
3.ラストの追加

この映画では「喪失と回復」により着目されているところがある気がします。
だからこその1だし3なんだと思う。あの事件がNYの人たちに与えた影響はそれだけに大きく,だからこそ3を足してでも,伝えたいことがあったんじゃないのかな,もしくはこの映画を観る人に近づけると考えたんじゃないのかなと思います。
まぁ多分に直接的だとは思うのだけれども。

2についてはまぁね。尺もあるし,あのくだり*2を映像化するのは予算的にもちょっとね。
二人の関係性をほのめかすから,原作読んでない人には気になるのかもだけど。


にしても「間借り人」とオスカー君が一緒に出てくる場面が本当に良かった。
場面場面の絵にドキッとさせらせるし,リズムが良くて。
マックス・フォン・シドー。これまでほとんど印象なかったけど,いい役者さんだなぁ。

あらためて原作小説を読んでみたいと思います。
そんなことを思いました。

★★★☆(3.5/5.0)

*1:原作は写真をとても効果的に使ってました。

*2:ドレスデン爆撃なんか